そうやってふらふらと入ってしまったのが、スターバックスコーヒー。原宿、竹下通りそば、明治通沿い。いまさっきまで違うスターバックスにいたっていうのにね。
この店からも見えちゃう距離の、まだ開いていない、表参道上空に明日グランドオープンの、
「スターバックスコーヒー東急プラザ表参道原宿店」
から出て来たばかりなのにね。
この間、打ち合わせで千駄ヶ谷のカレーバー・ヘンドリックスに向かっている途中。
電話が鳴っているのに気づかず、自転車を止めてiPhoneを見たら、知らない電話番号。携帯電話じゃない番号。
だれだろう。
「もしもし、お電話をいただきました、、、」
「もしもし、こんにちは。三陽堂です!」
「あっ!こんにちは。先日はお邪魔しました」
そんな会話から始まったこの電話。表参道にある書店、山陽堂さんからだった。
びっくりするオファーがやってきた。
「ヤッコさんご指名です。またブログを書いてくださいって」
「えっ?」
どこかうわの空になってしまいそうな脳みそをだましだまし話を聞いてみると、パーティーへの招待。オープンの前日に招待をいただいた。河出書房新社から文庫版で発売になった書籍、「表参道のヤッコさん」出版記念パーティー+スターバックスコーヒー東急プラザ表参道原宿店プレオープン。店舗内のアートワークのプロデュースをヤッコさんが手がけられたご縁、だそうだ。
びっくりした!またヤッコさんにびっくりさせられた!
なんだろう、この感じ。
ヤッコさん、高橋靖子さんの熱に巻き込まれて沖へ沖へと連れて行かれちゃう、この感じ。波、というか、潮、流れ、というか、何かそういうもの。
例のあそこ。原宿の、表参道の、一番大事なあの場所にテナントビルができるそう。うん、そう、あそこ。もと「原宿セントラルアパート」があった、あの角に。
正直うんざりしていたんだよ。前の建物もなんだか顔の見えない何かだったなあ、という感があったし、セントラルアパートを知ってしまっている人はみんな多かれ少なかれ、そういう気分、あると思う。
表参道の交番のお隣の本屋さん「三陽堂書店」で少し前に始まった
「表参道のヤッコさん展」(4/20まで)
「表参道のヤッコさん展」(4/20まで)
日本のスタイリストの祖、高橋靖子さんにたくさんのものをいただいた世代のわたしは「ちょっとなにか、恩返しでもしなければ」という気持ちがいつもどこか頭の端にある。
彼女らに、本人そのものに、ではなく。何かこう、おもしろいことを誰かに伝えたり想いのままに何かを表現したり、そういうものを別の誰かに見せることで、還元してみたいな、とか、思ったりするのだ。
いいチャンスをもらってしまった。それも文章だ。ブログで恩返し、そんな形もあるかもしれない。よしっ。
原宿。表参道の交差点。
ピカピカの、誰も入ったことのない真新しいビルにパスをピッと見せて入っていくのは気分がいい。なんでそんな素敵なことになっちゃったかなあ、の想いも同じくらいある。とにもかくにもここ、東急プラザ表参道原宿のスターバックスコーヒー、素敵な店に仕上がっている。広々したテラスがあって、まるでちょっとした公園のようだ。
眼下にはラフォーレ原宿と表参道の交差点が。こんな角度でこの交差点を見ることなんて初めてだ。もうあの頃は遠い昔で、望むべくもなかったはずの光景。
入り口で三陽堂さんのおなじみの顔がお出迎えをしてくれた。にこにことされててとてもうれしい、こっちもうれしくなる。
きっとお互い、自分のことのように晴れがましい気分だったのじゃないかなあ。
プレス枠、ではなく「ちょこっとプレス枠」なんてのがあればまさに私がそれで。とはいえまがりなりにもヤッコさん公認!
早めに入ってカメラやバッテリー、レンズ類の準備をして(コンパクトデジカメとiPhoneだけどね(笑))スタンドバイ。奥の方で2人組の男女がリハをやっていた。あれっえーっと、どこかで聞いたことがある声、なんだけどなあ。歌っているのはスタンダード。えーと、誰だったっけ、、、
18時。時間になると会場はたちまちいっぱいに。すごい熱気、でもすごくみなさん楽しげで。わたしもも少し燃料を補給。おいしそうなパーティーフードとスパークリング。うれしいな。
スターバックスでアルコールとはちょっと楽しいね。
しかしパーティーってのは、どうしてこう、サバイブだったりタフだったりするのかな。
やっぱりおっかない人ばかりがいるオーラがあるな。名前は知らない、顔も知らない。でも、「あれっ?」とおもうひとばかり。明らかにそういうオーラがある人ばかり。
うーん、が、ひっこんでいられない。前へ出ろ、写真とれ、ヤッコさんの顔見ろ!そう頭の中で誰かが電波を送ってくる。
こういうときはその謎の電波に乗っかっちゃうのがわかりやすい、楽になる。そいつのせいにしちまおう。
こんなに混雑している会場でも、小柄なヤッコさんはとてもよく目立つ。
みんなが彼女を追いかけて、、、は意外や、ない。
みんなが彼女を追いかけて、、、は意外や、ない。
違うのだ。ヤッコさんの動きのほうが速いのだ。誰かが追っかけるよりも先に彼女の方からその追っかけてくる人たちに声をかけ、腕を絡め、顔を近づけ、おしゃべりに興じてる。なんて素敵な人だろうねえ。魅力たっぷりの人柄。誰もがついてっちゃう熱気。きっと10年前も20年前もその前も、かわってないんだろうね、よくわかる。
あ、ライブが始まるみたいだ。
臆せず人並みをかき分けて前に出ると、、、
坂本美雨さん。
うわ~、そうだった。さっきの声はたしかにそうだよ。
リハーサル、スタンダードナンバーを歌ってたから気がつかなかった。
うっかり人波をかき分けて前に出たら、真っ正面、3メートル。その距離で、いつもよく聞く彼女の歌声がまっすぐやってくる。うーん。
彼女がまっすぐこちらを見つめて歌を歌う。これは大変だ。こんなことされたら普段の5倍くらいファンになるよ。なるなるこれじゃあなるって。
2曲聞いたところでヤッコさんがやってきて、そでで花束を手に彼女の歌を楽しんでいる。すると、彼女の歌の方向がヤッコさんに向かうのがわかる。その感じがまた楽しい。歌ってのは、そういうものだよね。
少し魔法から抜け出せて、ほっとする。どっかに持ってかれちゃう前に正気に戻れた。
さいごにエルビスプレスリーの「好きにならずにいられない」を歌ってくれたのにはぐっと来た。うん、なんかわかる、この選曲。
お父様のレオンでのエピソードなんかも語ってくれて、会場が沸いている。感慨深いなあ、いろいろと。
野宮真紀さん。
相変わらず、カッコいいまんまで、どきどきする。ポータブルロックとか、ピチカートファイブとかのポップな音をこれでもかと詰め込んでいた頃を過ごしてきてるのだもの。どうしよう。どうしようもないが(笑)
近くて困る。何度もすぐ横を横切ったりすれ違ったりして困る。明らかに目が合ったりして、また困る。うーん、困ったなあ。
パーティーの熱気は最高潮に。みんなが興奮して、楽しそうにおしゃべりをしている。
こういうパーティーではよく感じるのだが、ある程度の規模人数になるとそのパーティーの根幹が少しずれてきたりすることがある。パーティーの趣旨とは別なところで会話がなされたり、ビジネスになったり。ここはそういう空気がなくて不思議だなあ。まるでお誕生会のよう。みんなの気持ちがちゃんとヤッコさんに向いている感じがする。
いろいろな、この店に関わった人たちや出版に関わった人たちにマイクがまわり、おもしろい話が聞こえてくる。
感じてしまう。この人たちもヤッコさんにやられたな、と。その情熱にほだされて、巻き込まれて、一肌脱いでしまう。
わかる、わかる。よくわかる。
スターバックスコーヒーの方々の話もおもしろかった。企画設計などを行った担当の方のお話。「地域に根ざす」「元あったものを大事にする」「土地の歴史を意識する」うん、すごく大事なこと。
今回ヤッコさんはこの店「スターバックスコーヒー東急プラザ表参道原宿店」には内装デザインの企画で参加されている。というか、フィーチャーされてるんだね、このお店に。彼女の写真自体がこのお店に組み込まれ、飾られている。「高橋靖子さん」の写真でもあるけれど「表参道のヤッコさん」の写真であり、それは素晴らしい時代の表参道のスナップ写真でもある。
あれっ、ふと気がついた。はじめに思っていた新しい場所に対する「うんざり」はどこかに消えてしまっていた。
なんだろう、この感じ?
うん、そうか、ヤッコさんか。やっぱりそうか。
彼女が元いた場所に戻ってきてくれて、そこに彼女の思いを少しつぎ込んでくれた。
なんていうのかな、それ。
「禊ぎ」(みそぎ)
という言葉を思い出してしまったのだ。
歴史あるものや魂あるものが朽ち、新しいものに入れ替わる。これは世の常。
だけど、そういうものには必ず強いひとの念が残るものだ。それを軽んじてはいけないな、と思うのだ。それを大事にして次の世代に引き継ぐような、禊ぎが必要だったのだ、あの素晴らしい場所には。
一時、吹きさらしの駐車場にまで成り果ててしまった、かわいそうな隠田の地は(旧地名をおんでん、という)今日をもってまた、きちんと価値ある場所に戻った。
お風呂屋さんもお肉屋さんも八百屋さんも喫茶店もあった、小さな商店街のあった隠田は、いまはない(信じないだろうが、あったんだよ。このビルの向かい側の裏手に)けれど、見てくれではなく、何がある、何がないではなく、ビル全部であるとかないとかではなく、あの頃、文化や価値を作ってきた場所に想いある人が帰ってきた、そして何かを刻み付けた。
お風呂屋さんもお肉屋さんも八百屋さんも喫茶店もあった、小さな商店街のあった隠田は、いまはない(信じないだろうが、あったんだよ。このビルの向かい側の裏手に)けれど、見てくれではなく、何がある、何がないではなく、ビル全部であるとかないとかではなく、あの頃、文化や価値を作ってきた場所に想いある人が帰ってきた、そして何かを刻み付けた。
それだけで、心が穏やかになる何かがある。そう思った。
「スターバックスコーヒー東急プラザ表参道原宿店」
は、グランドオープン前日に、特別の店になってしまったみたいだ。
この記事をヤッコさんと山陽堂さん、スターバックスコーヒー東急プラザ表参道原宿店の緑のエプロンの皆さんと今回この催しに関わった皆様に差し上げたく思います。
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前回の記事:山陽堂書店『表参道のヤッコさん』展。本当に表参道でヤッコさんに会った。
http://hapi3s.blogspot.jp/2012/03/blog-post_27.html
Yacco×STARBUCKS from augment5 Inc. on Vimeo.
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